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フランスで見聞きする言葉、面白いと思った表現、慣用表現の語源、フランスの文化や歴史などで使われている専門用語など、興味を持って調べたことを記録しています。
フランスには「banane(バナンヌ)」と呼ぶ小さなバッグがある。

  
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カテゴリ: 動物
東京育ちの私が狐を初めて見たのはフランスの農村である。美しくて、神秘性がある野生動物だった。人間がいると気づいて逃げていく彼らは、何度も立ち止まり、振り返ってこちらを見るのだ。鹿やイノシシなどはそんなことはしないで、一目散に逃げ去る。

不思議な行動をする狐。日本には、狐にまつわる言い伝えがたくさんあるのも、それが理由かと思った。

フランスの農村で狐を見かけるのはそう珍しいことではない。フランスにも狐にまつわる伝説があるだろうと思って検索してみたら、日本の伝説ばかりがトップに並んでしまったので放置。

フランスでは野生動物に意味を持たせないのかなと思ったのだが、友人から勾配の厳しい山に住む「ダユ」と呼ぶ伝説上の動物がいるのだと聞いたことがあったのを思い出した。

調べてみたら、こういう姿に描かれていた。

Dahu  
以前から気になっている日本語がある。「失言」という言葉だ。

うっかり口から滑らしてしまった発言の意味なのだろう、と私は受け取る。英語訳の「a slip of the tongue」という感じだ。

和仏辞典ではどう訳しているのか調べてみたら、「parole malheureuse」が定訳になっていた。

確かに、公の場で言うべきでないことを口走ってしたために非難を受けた張本人にとっては「不運な発言」だったわけだ。しかし、その発言を侮辱や差別だとマスコミが批判するときに使う「失言」をこう訳して良いものなのだろうか?!

日本の政治家の「失言」は「うっかり言ってしまった」というものではなくて、「権力を握っているオレ様は、自分が思っていることは何でも言って良いのだ」という自負から暴言を放っているように見える。

日本の政治家は、想像を絶するような酷いことを言ってきた歴史がある。

例えば東日本大震災に関して、「これが発生したのは天罰だ」、「東京でなくて良かった」。東京電力福島第一原発事故で今も帰れない自主避難者は、本人の責任。女性が生殖能力を失っても生きているのは無駄であり、地球にとっての弊害だ。重度障害者には人格がない。水俣病の抗議文はIQが低い人が書いたのだろう。自殺したいなら、さっさと死ね。数えきれないほどの事例がある。

もちろん、反対を唱える人々はおり、マスコミも批判したりもするのだが、本人は「失言撤回」として陳謝をすれば済むことで、政界から排斥されることもない。

選挙民にも、政治家が豪快なことを言ってくれたと喜ぶ人の方が多いのかもしれない。大きな話題になっても、次の選挙では暴言を放った政治家は再当選している。差別発言などをして問題にされるのは、返って政治家の人気を増すので暴言を連発しているのではないかとさえ感じる。


フランスでここまでの暴言を放った政治家がいるとは思えない。いや、フランスに限らず、民主主義国家で、このように弱者を切り捨てたり、非人道的な発言をする政治家がいるとは想像できない。


もちろん、フランスの政治家たちも口をすべらせてしまった発言をするので、ニュースなどで大々的に取り上げられる。単語を言い間違えてしまった、つい腹立って言うべきではないことを口走ったなどの発言は政治家をバカにするきっかけになるのが面白いので取り上げられている。

しかし日本では、どんなに酷い暴言でも、撤回可能な「失言」として片づけられるのだ。
「失言」に類似したフランス語を探してみた。


Perles, gaffes et vacheries : L'impensable bêtisier des politiciens

La parole malheureuse : de l'alchimie linguistique à la grammaire philosophique
Jacques Bouveresse著(ジャック・ブーヴレス